底 辺 か ら 這 い 上 が れ。

転んでもただは起きぬ!

わたし 、定時で帰ります。

 

 

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こんばんは。

今回は活字中毒の僕が、最近読んだ本について紹介したいと思う。

(ネタバレ大有り)

筋金入りの読書好きであり、「本は人生に、彩りを与えてくれるもの」と考えている僕は暇さえあれば書物を手に取る。

今月は何を読もう?自由な時間が限られてしまう社会人にとって、どの本に時間をかけるか。そんな事を考える事も些細な楽しみである。

 

記念すべき本紹介第一弾は、著作 朱野 帰子の

わたし、定時で帰ります。

まずタイトルに惹かれた。

単純明快なタイトルながらも、どこか訴えてくるものがありそうな一冊だと感じた。

主人公は、文字通り「定時で帰ること」を仕事に取り組む上での信条とし、どんなに忙しくても残業は一切しないアラサー独身女性会社員が主人公である。

そういえば数年前、働きマンという物語が一躍有名になったっけ。

菅野美穂が主役で、恋人よりも仕事を優先するキャリアウーマン...

閑話休題

まず、主人公が仕事は定時で帰ること。と決めていることが恐ろしいのだ。なにが恐ろしいかって、仕事は定時で帰る事が全社会人にとってあたりまえなのに、そんな宣言をしていることだ。

ブラック企業、違法な長時間労働、劣悪な労働環境、休む間もない休日出勤。

そんな数々の「異常な」状態が、ごくごくあたりまえのように存在している日本に警鐘を鳴らす一冊。

 

と読みはじめは思っていた。

インフルエンザでも出勤してくる迷惑極まりない皆勤賞女、ワーカホリックよろしくの仕事中毒な男、家庭を顧みず周りを出し抜く事も平気でやるバリバリのキャリアウーマン志向の女、口だけの無能な上司、軽薄な目標を掲げて現場任せの管理者...

そんな個性豊かな歪な同僚達に囲まれても、「なぜ仕事に命をかけなければいけないの?定時で帰って、自分の時間を楽しむことの何がいけないの?」

と、決して自分の信念を曲げない主人公に共感を持って読んでいた。

かく言う僕も、仕事に人生をかけたくない。趣味や交友、または自分のやりたいことを仕事以外で見出していきたいタイプだからである。

だからダラダラと雑談して居残る社員が大っ嫌いだ。仕事以外にやることない可哀そうな人たちと思っている。偏見だが、偏見と思われてけっこうである。

さて、仕事だ仕事。と働く自分に酔っているやつはうすら寒い。気持ちが悪い。

布団で1日ごろごろして、好きな時間に起きて、好きな時間に寝る。それができないから、仕方なく会社という組織に縛られて働いているのだ。

と、とにかく僕は冷めている。だから仕事人間は気味が悪いと思っている。

きみたちみたいのがブラックな企業を作り出しているんだけどな…

と、自分の事を語ってしまったがそんな主人公の定時帰宅習慣は、徐々に脅かされていく。定時後のビール一杯もできなくなっていく。

 

他の企業から移ってきた無能な上司が無理難題な仕事をとってきたのだ。

と、ここで会社に命をかけて働いている社畜たちは文句をいうどころか燃える。アドレナリン依存症である。

こんなのは無理だ。定時では帰れないと主人公は声をあげるも、そんな声が通るわけもなく。

残業なんてしてあたりまえだという考えが根底にあるからである。悲しい現実である。

 

親に相談するも、組織人でいる限り、上の人間には従うものだ。楽をするな。おまえは仕事に対して適当過ぎると一蹴。

 

最終的に現場マネージャー的なポジションを任されることになる主人公は、けっきょく社畜同様に働くことになる。

「私は自分ばかりが定時で帰る事を考えていた。自分の事して考えていなかった。これからは皆が、定時に帰り快適に仕事ができる環境を必ず実現してみせる!」と誓う。

 

個性豊かなキャラクター達の「定時?なにそれ」的な考え方を変えられたかどうかといえば、うーんという感じ。

風邪でもやってくる皆勤賞女を帰らせ、子供が熱を出す緊急事態でも平気で仕事をするキャリアウーマンかぶれを帰らせ、仕事ができないから会社に寝泊まりする男カバーし、無能な上司をそのポジションから外し環境を整えることに精を出し、

でも最強の仕事人間の「社畜」(元恋人)の考えは最後まで変えることができなかった。

 

あまりにもドラマに過ぎる内容や、吐き気がするほどのくさいセリフには嫌悪感をもったが、内容としてはまずまずか。残念ながら大ヒットはしないなあと思った。

 

題材としては、とても良い。この日本という国においては、働く事に対しての考え方がどこか曲がっている。

先進国であり、失業率も低いのにも関わらず、幸福度が低い国であり、年間の自殺者は異常な数字をたたき出している。

しかし誰も大きな声を上げない。間違った生き方をしていると。

 

そんな環境に「わたし、定時で帰ります!」と声を上げて、メッセージを込めた一冊であってほしかった。惜しい。惜しかった。

この一冊では優秀な社畜達の考え方は変えられないだろう。定時?甘えんなと一蹴される現実がみえる。

ニートや無職を問題視するまえに、まず本質の働き方を変えなければブラック企業は存在し続けるだろう。

 

本作品で、24時間戦えますか?という、かの有名なフレーズが出てくる。

24時間戦った先に一体なにがあるというのか?会社への貢献?出世?お金?

 

僕は戦いから逃げ出す事も勇気だと思う。

それは会社に、組織に歯向かうということだが、誰かが声を挙げなければならない。

むしろ戦うことよりも勇気がいる事だ。